
小児整形外科
小児整形外科
小児整形外科とは、乳児期から思春期のお子さんを対象とした整形外科です。
大人とは異なり、子どもは筋肉や骨なども発達途中にあります。その発達の途中にある子どもに対して、発達段階に合わせた治療をすることで、後遺症や変形などが生じないように専門の医師が対応いたします。
子どもの場合、骨折などを見逃すと成長障害を引き起こすことがあります。また、レントゲンで偶然に骨の腫瘍が見つかることも珍しくありません。お子さんの症状について、気になることがありましたらご遠慮なくご相談ください。
先天性筋性斜頸は、片側の胸鎖乳突筋の線維化による拘縮で、頭部が患側に傾き、顔が健側に回旋します。先天性斜頸には、骨性斜頸や眼性斜頸などがあり、これらとの鑑別が必要です。なお、後天性斜頸には、痙性斜頸、炎症性斜頸、外傷性斜頸などがあります。治療としては、約90%は自然治癒するため、1歳頃までは経過観察します。自然治癒せず筋緊張が強い場合や、斜頸位・頭部運動制限が残る場合には、2~3歳頃に胸鎖乳突筋の切腱術を行い、顔面非対称や頭蓋変形を予防します。
側弯症とは、背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うこともあります。日本での発生頻度は1~2%程度で、特に女子に多くみられます。原因が不明の側弯を特発性側弯症といい、側弯症全体の60~70%を占めます。側弯症は、弯曲が進行する前に診断し、治療を開始することが大切です。
肘内障は、肘の輪状靱帯から橈骨頭がはずれかかることで起こります。子どもが手を引っ張られた後などに、痛がって腕を下げたまま動かさなくなることがあります。治療は徒手整復を行いますが、整復後は普段通り腕を使ってかまいません。肘内障は幼児期に繰り返すことがありますが、成長とともに発症しなくなります。ただし、時間が経つと整復が困難になることもあるため、早めに整形外科を受診することをおすすめします。
発育性股関節形成不全とは、出生前後にみられる股関節脱臼・亜脱臼、将来的に脱臼をきたす可能性がある臼蓋形成不全を含む、脱臼準備状態にあるすべての病態を指します。病因には、遺伝的要因、出生前環境要因、出生後環境要因があります。遺伝的要因としては、家族内発生が多いことが知られています。出生前環境要因としては、骨盤位分娩での発生頻度が正常分娩より高く、子宮内での胎児の肢位が影響しているとされています。出生後環境要因としては、下肢の自由な運動を妨げる着衣やおむつの使用、抱き方などが影響しているとされています。診断は、問診および臨床症状、画像検査などによって行います。早期発見・早期治療が原則であり、生後6か月以内に診断し、リーメンビューゲル法で整復できれば、治療成績はおおむね良好です。リーメンビューゲル法で約80~90%の脱臼は整復されますが、整復されない場合には、牽引療法や徒手整復、観血的整復などで整復を試みます。
当院の画像検査は、超音波を用いた世界的な標準方法であるグラフ(Graf)法で行っています。
単純性股関節炎は、急に発症する股関節痛や大腿部痛、荷重困難、跛行などを特徴とする疾患です。好発年齢は4~10歳で、男児は女児の2~3倍の頻度で発症します。原因としてウイルス感染、アレルギー反応、微細な外傷などが考えられますが、いまだ特定されていません。通常は安静にすることで自然に症状が改善し、予後は良好です。
化膿性股関節炎は、単純性股関節炎と同様に股関節痛や大腿部痛を伴う歩行障害を呈する疾患です。小児では5歳以下に好発し、特に2歳以下の症例が半数を占めます。主な症状として、発熱、不機嫌、食欲不振、全身倦怠感などがみられます。また、股関節痛のためオムツ交換時に泣いたり、患肢を動かしたがらなかったりすることがあります(仮性麻痺)。化膿性股関節炎は、診断や治療の遅れにより重大な後遺障害を残すことがあるため、早期の診断と治療が非常に重要です。
ペルテス病は、小児の大腿骨頭壊死で、5歳から7歳の男児に多く見られます。大腿骨頭の端にある骨端部が壊死してしまう病気です。原因はまだはっきりしていませんが、大腿骨頭への血流障害、内分泌異常、血液凝固系異常、外傷などが関与していると考えられています。予防はできないため、早期発見・早期治療が重要です。
股関節痛や歩容異常が主体ですが、膝関節痛を訴えることもあるため注意が必要です。原因としては、肥満や成長期のスポーツ活動による力学的負荷が大腿骨に加わることで発症します。また、成長ホルモンや性ホルモンの異常によって発症することもあります。病態としては、9歳から15歳頃の股関節の成長軟骨板が力学的に弱い時期に発症し、成長軟骨板ですべりが生じます。特に男児に多く見られる疾患です。大腿骨頭すべり症では、なんらかの手術が必要になります。
成長期にランニングやダッシュ、ジャンプ、ボールのキックなどを行うことで、骨盤やお尻に強い痛みを訴え、骨盤の骨端線部に剥離骨折が生じることがあります。成長期の骨盤では骨端線が残っているため、筋肉の急激な収縮による牽引力が力学的に弱い骨端線部にかかり、剥離骨折を起こします。最も影響を受けやすい部位は、上前腸骨棘、下前腸骨棘、坐骨結節です。一般的には手術などの外科的療法を必要とせず、保存療法が行われます。
まっすぐ膝を正面に向け、足をそろえて立ったときに、膝と膝の間に隙間ができる状態をいいます。2歳ごろまでは、多くの子どもにO脚が見られます。成長とともに自然に矯正されることが多いですが、なかにはくる病やブラウント病などが原因となっている場合もあります。
両膝が内側に湾曲しているために左右の両膝をそろえても左右のくるぶしが接しない状態を言います。2歳から3歳ごろにX脚は強く現れ、7歳〜10歳までに徐々に治っていきますが、治らず歩行に支障が出るなどご心配の場合はご相談ください。
10〜15歳くらいの活発な男児に起こりやすく、多くはスポーツ等による膝関節の酷使や運動量と成長の不均衡によって、膝蓋腱の未熟な骨端の付着部において過剰な牽引が生じ、成長軟骨部が剥離することが原因と考えられています。症状は、ひざのお皿の下の骨が徐々に突出してきて、運動時の痛みを訴えます。特にボールを蹴る、ジャンプなどの動作時に痛みが出ます。赤く腫れたり、熱を持ったりすることもあります。
先天性内反足とは、前足部の内転、後足部の内返し、足全体の凹足と尖足の変形を伴う、先天的な足部の変形です。わが国における発生頻度は約1,500人に1人の割合で、男女比は2:1と男児に多く、両側例と片側例の頻度は同程度です。出生時からみられる特徴的な変形により診断が可能で、できるだけ早期に治療を開始することが重要です。
踵骨骨端症は10歳前後の男児に多くみられ、踵の軽い腫れや歩行時痛が生じます。運動の後や、朝起きた時などに症状が出ることが多く、急に強く痛むというよりはジーンとするような慢性の痛みが特徴です。かかとの骨の端でアキレス腱が付着しているところ(踵骨骨端症)に運動などで負荷がかかり、そこにアキレス腱の引っぱる力が持続的に加わることで、踵骨に血流障害が起こり、かかとの骨の骨端軟骨より先の部分が壊死、または骨軟骨炎を発症するのがこの疾患です。
赤ちゃんの足には、まだアーチ(土踏まず)がありません。歩き始めることで足の筋肉が発達し、3歳を過ぎるころには土踏まずが見られるようになります。この土踏まずが形成されていない足を、外反扁平足と呼びます。関節や靱帯がゆるい場合、外反扁平足を合併しやすいと考えられています。外反扁平足では、後ろから見るとかかとが外側に傾いているのがわかります。立位で足の裏を観察すると土踏まずがなく、体の重みを足の裏全体で受け止めるのではなく、内側に集中してしまいます。
足の変形以外に見られる代表的な症状は次のとおりです。
外反扁平足を治す基本は、足の筋力をつけ、自分で土踏まずを形成することです。しかし、関節や靱帯がゆるいため、まず正しい靴や装具を使用して足を安定させます。その状態で運動するほうが、疲れにくく、より効果的です。当院では、適切な靴の指導や装具の提供を行っていますので、お気軽にご相談ください。
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