
股関節診療
股関節診療
股関節の痛みや違和感でお悩みの方へ
~ 股関節疾患の専門的な診断と治療を行っています ~
股関節の痛みや違和感を感じると、年齢のせいだと自己判断することが多いですが、実際には股関節疾患が原因であることも少なくありません。
股関節は体の中で最も負担が大きく、立つ・歩く・しゃがむなどの日常的な動作に欠かせない重要な部位です。
そのため、股関節の痛みは生活の質を大きく低下させる原因となり得ます。
当院では、院長が股関節疾患の専門医として、股関節の構造や病態に基づいた精密な診断と、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療法を提供しています。症状が軽微でも早期に適切な治療を行うことが、症状の進行を防ぎ、手術を避けるためにも非常に重要です。
股関節は足の付根にある大きな関節です。太もも側の大腿骨頭(だいたいこっとう)が、骨盤側のお椀の形状をした寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込み、大腿骨と骨盤をつないでいます。寛骨臼と大腿骨頭の表面は軟骨に覆われ、その周りは関節包に包まれています。
変形性股関節症は、先天性の疾患や外傷によって関節に過度な負担がかかり、軟骨の破壊や軟骨と骨に変形が起きる疾患です。多くは、発育性股関節形成不全が原因となりますが、加齢変化や体重増加によって発症するケースもあります。女性に多くみられる疾患です。
関節軟骨がすり減ることで炎症が起き、初期には立ち上がりや歩き始めに足の付け根に痛みを感じます。足の爪切りができない、靴下が履きづらい、正座や和式トイレが困難といった支障を来すこともあります。進行すると痛みが強くなり、持続痛や夜間痛(夜寝ていても痛む)が現れて日常生活動作(ADL)障害も大きくなります。
関節の変形の進行度は、前期・初期・進行期・末期に分類されますが、股関節の可動域や痛みには個人差があります。変形が進んでいたとしてもすぐに手術が適応されるわけではなく、痛みの程度や生活面での不自由さを考慮しながら治療を選択します。痛みが少なく日常生活に支障がない場合は、保存的治療を選択し、股関節周囲の筋肉を鍛える運動療法が中心となります。炎症や痛みを抑える薬剤を用いることもあります。
保存的治療で改善しない場合、骨を切って股関節を整える骨切り術や、股関節をインプラントに置き換える人工股関節全置換術が検討されます。このような手術を検討する際は、手術後のライフスタイルについて担当医と十分話し合うことが大切です。
大腿骨頭は、軟骨で覆われており関節内に深く納まっているため血管が少なく、血流障害を引き起こしやすい部位となっています。血流障害が起こると、骨の壊死が引き起こされます。この壊死した骨の部分が大きいと体重を支えきれなくなって、潰れて(陥没変形)しまい痛みが生じます。本邦では年間2000人程度の発症があることが知られていますが、男性ではアルコール多飲、女性ではステロイド(副腎皮質ホルモン)剤の服用に関連して生じることが多いことが分かっています。壊死域が広く、変形が進行する可能性が高い場合には、自分の骨を利用する手術として大腿骨内反骨切り術や大腿骨頭回転骨切り術を行うことがあります。これらの手術の目的は、大腿骨の形状を変化させることで、荷重面(体重のかかる部位)に健常な関節面を移動させ、陥没変形の進行を抑えることにあります。また、年齢などの要因にもよりますが、すでに変形が進行しており、自分の骨を温存する手術が困難と判断される場合には、人工股関節全置換術の適応となります。
大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)とは、股関節を動かした際に大腿骨(太ももの骨)と寛骨臼(骨盤側の受け皿)が関節内で衝突する状態を指します。FAIには、大腿骨頭から頚部への移行部が隆起しているCam型、寛骨臼の被覆が過剰なPincer型、そして両方の特徴を併せ持つ混合型の3種類があります。これらにより骨同士がぶつかり、関節唇や軟骨の損傷を引き起こします。主に若年層やスポーツ選手に多く、「長時間座った後の股関節の違和感」「しゃがむと痛い」「股関節を深く曲げると痛みが出る」などが特徴です。治療は、リハビリテーションや鎮痛薬、関節内注射といった保存的治療を行い、それでも症状が改善しない場合は、手術による治療を検討します。
寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)とは、寛骨臼の形成が不十分で、股関節の被覆が浅い(股関節の“屋根”が浅い)状態を指します。そのため、荷重を受ける面積が狭く、股関節がしっかりとはまらず、痛みや不安定感を引き起こすことがあります。また、「音が鳴る」「関節が抜けるような感覚」「階段の上り下りや正座がつらい」といった症状を伴うこともあります。長期的には関節軟骨がすり減り、変形性股関節症へ進行するリスクが高くなります。症状が軽い場合は、鎮痛薬、杖の使用、減量、運動療法などによる保存的治療が選択されます。これらを行っても痛みが続く場合には、年齢や変形の程度を考慮し、人工股関節全置換術や寛骨臼回転骨切り術などの手術治療を検討します。
関節リウマチとは、免疫系に異常が生じ、本来は体を守る免疫が正常な細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。関節の滑膜に炎症が起こり、こわばり、痛み、腫れなどの症状が現れます。主に手足の関節に生じますが、進行すると関節の骨や軟骨が破壊され、変形による機能障害をきたすことがあります。治療は、抗リウマチ薬やステロイドによる薬物療法(保存的治療)が中心です。それでも痛みが改善しない場合や、股関節の変形が進行して日常生活に大きな支障をきたす場合には、人工股関節全置換術などの手術治療を検討します。
大腿骨近位部骨折とは、大腿骨の上部(太ももの付け根部分)に起こる骨折のことです。大腿骨頚部骨折(股関節の関節内での骨折)と大腿骨転子部骨折(股関節の関節外での骨折)の2つに大きく分けられます。この骨折は、骨粗鬆症に伴って起こる脆弱性骨折の一つであり、特に高齢者に多くみられます。ただし、転落や交通事故など強い衝撃を伴う場合には、若い方でも起こる可能性があります。大腿骨近位部骨折は、手術を行わないと歩行が困難となり、多くの場合、寝たきりの状態に陥ってしまいます。そのため、基本的には手術による治療が原則となります。骨粗鬆症を基盤とする大腿骨近位部骨折の予防には、骨粗鬆症の治療が大原則となります。骨折前であれば、適切な治療により骨折そのものを未然に防ぐことができ、骨折後であっても、反対側の大腿骨などに生じる可能性のある続発性骨折の予防につながります。
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